【コラム#2】

 

損せずに得をとる 〜アドボカシー・マーケティングについての重大な誤解

 

■浸透途上ゆえの誤解

 

マサチューセッツ工科大学のグレン・アーバン教授がアドボカシー・マーケティングを提唱したのは、2006年のことでした。著書『アドボカシー・マーケティング 顧客主導の時代に信頼される企業』の中で、アドボカシー・マーケティングの手法が浸透するには「まだ5〜10年かかるかもしれない」と述べていますが、すでに7年が過ぎたことになります。

 

その予言めいた言葉のとおり、実際にここへきて、日本でもアドボカシー・マーケティングへの注目は急速に高まっています。目下、ビジネス関連の再注目キーワードだといえるでしょう。

 

しかしながら、新しい手法や用語が浸透していこうとする途上では、どうしても意味や解釈に揺らぎが生じてしまいます。アドボカシー・マーケティングについても、重大な誤解が蔓延しつつあるように思えます。

 

■アドボカシーは「損して得とれ」ではない

 

アドボカシー・マーケティングについての説明としてよく使われる言葉に、「損して得とれ」というものがあります。商売人の心構えとして大昔から言われ続けている有名な言葉ですね。

アドボカシー・マーケティングの基本理念は、顧客を最優先に考え、顧客の利益を最大化することですから、この言葉はよく似ているように思えます。

 

ところが従来の「損して得とれ」的思考のビジネスは、一見すると顧客のことを考えているようで、その実、企業主導による価値の押しつけでしかありませんでした。

 

この言葉の裏には、消費者を騙して不利益を与えようというニュアンスがあります。たとえば、ニーズのない在庫品を大安売りすることで買わせようとする行為。たとえば、一部商品を安くするかわりに他の商品を割高にして販売する行為。これらは、まさしく「損して得とれ」の考え方ではありますが、アドボカシー・マーケティングの考え方とは正反対です。

 

■「損をした」と考える時点で間違い

 

アドボカシー(advocacy)という言葉の原義が「支援」「代弁」「擁護」といったものであることを思い出せば、この2つの考え方の決定的な違いが理解できるでしょう。

 

本当に顧客の望むものだけを提供することこそが、正しいアドボカシー・マーケティングの手法です。

今の時代、顧客の不利益となるような行為をすれば、あっというまにインターネットで暴かれてしまい、信用は地に落ちます。アドボカシー・マーケティングとは、信頼を獲得するための企業努力だと言い換えることもできるでしょう。

 

長期的な信頼関係を築くことは、企業と顧客の両者にとって得であるはずです。「損をした」と一度でも思ってしまった時点で、それはアドボカシーの考え方ではないのだと認識すべきです。

 

 

損することなく得をとろうと考えることなしには、アドボカシー・マーケティングは実践できません。

 

2013.12.1

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